夢の国はおいくら?株式会社オリエンタルランド PBRの落とし穴
みなさんこんにちは
今回取り上げるのは株式会社オリエンタルランドです。
オリエンタルランドといえば日本で一番有名なテーマパークである東京ディズニーリゾートを運営する会社です。
夢の国の異名を持つディズニーランドは広大な敷地に数々のアトラクションが配置され、ディズニーの映画の世界を見事に再現しています。ディズニーランドは貸借対照表上ではいくらで計上されているんでしょうか。
2018年3月期の有価証券報告書によると
ディズニーランド及びディズニーランドホテルは110,090百万円
ディズニーシー及びホテルミラコスタは173,012百万円
となっております。合わせて約2800億円です。
金額が大きすぎて安いのか高いのか分からない人も多いでしょう。
オリエンタルランド株式会社は過去5年間毎年600億円〜700億円の利益を計上しています。
毎年700億円を稼いでいるディズニーランドとディズニーシーが2800億円と考えると安すぎるようにも思えます。もっと価値があるようにも思えます。
しかしこれは会計のルールに基づいて計上しているために、このように割安な金額で計上されているのです。
企業が事業用に使っている固定資産は買った値段で貸借対照表に計上されて、その後使用期間に渡り減価償却をしていきます。
減価償却について簡単な数値例で説明していきましょう。
会社が100万円の車を買い5年使用するとしましょう。
各期の貸借対照表と損益計算書の計上額は以下の通りになります。
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1年目 80万円 20万円 20万円
2年目 60万円 40万円 20万円
3年目 40万円 60万円 20万円
4年目 20万円 80万円 20万円
5年目 0万円 100万円 20万円
車の購入のために支払った100万円を、そのまま購入した時に費用として処理してしまった場合、一時的に多額の費用が計上されてしまいます。車は1度購入したら何年も使えるわけですから、使用期間に渡り費用を配分すべきです。
そのため会計上は車のように高価で長く使用するものについては買った値段で資産に計上したうえで使用期間にわたり減価償却をする必要があるのです。
ちなみに使う期間を耐用年数と呼びます。多くの会社では法人税法で決まっている耐用年数を使っています。
話をオリエンタルランドに戻しましょう。
先ほど紹介したディズニーランドとディズニーシーの帳簿上の価格は約2,800億円と言いましたが、これは買った値段から減価償却費の累計額を差し引いた金額ということになります。
2018年3月期の
連結貸借対照表の有形固定資産の計上額は以下の通りです。
取得原価 減価償却累計額 差引
建物及び構築物 676,401百万円 △400,892百万円 275,509百万円
機械装置及び運搬具 262,533百万円 △235,340百万円 27,193百万円
土地 117,653百万円 ー 117,653百万円
その他 86,795百万円 △72,320百万円 14,475百万円
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合計 1,143,382百万円 708,552百万円 434,830百万円
オリエンタルランドが2018年3月期末時点で事業用に使用している資産(大部分はディズニーランド、ディズニーシー)は約1.1兆円で取得したものでそのうち7,000億円は減価償却済みで残りの約4,300億円が貸借対照表に計上されているということになります。
年間約3,000万人もの人が訪れ、莫大な利益を生み出すテーマパークであっても会計上は取得原価から減価償却累計額を引いた金額で計上されます。
毎年700億円の利益を生み出すテーマパークで、この先30年は同じ状況が続くと仮定すると2兆1千億円の利益を生み出すことになります。
だからと言ってこの2兆1千億円を資産計上することは会計上認められておりません。
(これを会計チックにいうと自己創設のれんの計上は認められておりません)
投資の判断で使用されるPBR(時価純資産倍率)は貸借対照表の純資産と時価総額を比較したものとなっています。
PBRが高くて割高に思える銘柄であっても、オリエンタルランドの例のように莫大な利益を生み出す資産が、割安な金額で資産計上されていることを考慮に入れれば割高ではない可能性もあるのです。
その逆も然りです。
PBRが低く割安な銘柄であっても、翌年に巨額の減損損失を計上することになり一気にPBRが高くなってしまう可能性もあるのです。
今回は株式会社オリエンタルランドの固定資産を取り上げました。
次回は株式会社オリエンタルランドの損益計算書にスポットを当てていきたいと思います。
それではまた。